Cheers!体のハンブンがビールでできてるSANTO(@elsantobeer)です。
この記事ではビールってどうやってできるの?という疑問を解消します。
ビールってそもそも何からできてるの?と思った方はこちらの記事もあわせて読んでみてくださいね。
ビール醸造の全体像
ビールとは一言でいうと「麦からできる醸造酒」です。
醸造酒(じょうぞうしゅ)とは、原料を酵母によりアルコール発酵させて作られた酒。蒸留などの作業を経ずに、基本的にアルコール発酵させたままの状態で飲まれるものをいう。
まずはざっくりビールの作り方の全体像から。
2.麦芽を粗めに破砕
3.破砕した麦芽にぬるま湯を加えて「おかゆ」を作る
4.おかゆから麦汁を濾過
5.麦汁を煮沸しながらホップを投入
6.麦汁を冷やして酵母を投入
7.発酵
8.熟成
9.濾過、熱処理
10.容器に詰める
それでは各工程を詳しく見ていきましょう!
麦を麦芽にする
麦芽は「発芽した麦を乾燥させたもの」。
まずは麦を発芽させるところから。麦を水に2日ほど浸してから布巾の上に1週間ほど放置しておくと芽がニョキッと出てきます。この芽が完全に成長する直前で乾燥させて発芽をストップさせます。(ぼくはこれを「麦のすんドめ」と呼んでいる)
麦は発芽することによって糖化酵素(アミラーゼ)を作ります。本来なら成長するために自分がもつデンプンをエネルギーに変えようとこの糖化酵素を作るのですが、人間はこの酵素を使ってビールを作ります。なので麦がエネルギーを使ってしまう前のギリギリのところで乾燥させてすんドめする必要があるわけですね。
この時の乾燥のさせ方によってビールの色や味わいに個性が出てきます。ちなみに麦芽を乾燥させることを焙燥といいます。例えば低い温度で焙燥した麦芽を使ったビールは色が薄く、高い温度で焙燥したものを使ったビールは色が濃いといった具合。非常にシンプルですね!
ビールの色だけじゃなく、香ばしい風味や焦げた苦味などもつきますよ。うーん麦芽って奥が深い。
麦芽についてもっと知りたい!というかたは以下の記事もぜひ読んでみてくださいね~
麦芽を粗めに破砕
今度は麦芽を粗めに破砕します。ここで注目してもらいたいのが”粗めに”ということ。粗めに破砕することで後々の工程で麦汁を濾すときに麦芽の殻が天然のフィルターの役割をします。
また細かくしすぎると苦味やえぐみが出やすくなるというデメリットも。なので粉砕じゃなく破砕!ここテストに出ます笑。
破砕した麦芽にぬるま湯を加えて「おかゆ」を作る
破砕した麦芽にぬるま湯をかけて「おかゆ」を作ります。何をしてるかというとこのおかゆを甘くしているのです。
「麦芽にお湯かけただけで甘くなるの??」それがなっちゃうんですね〜。酵素のチカラで。酵素のチカラで驚きの甘さ(洗剤のTVCMっぽい)!
このおかゆには麦のデンプンと麦芽を作る過程でできた糖化酵素がたくさん入ってます。デンプンは糖(グルコース)が鎖のように連なってできているので酵素がこの鎖を切ってやることで糖に変わります。このおかゆを酵素が働きやすい温度(62度〜70度)に保つことで酵素が頑張ってデンプンを糖に変えていくわけですね。
この糖を酵母が食べるとビールに必要不可欠なアルコールと炭酸ガスができます。酵母が食べられるのはこの糖の連なりが3つ以下のものだけなので、酵素は酵母が食べやすいサイズに切ってあげる必要があります。
酵素には大雑把なやつ(αアミラーゼ)と几帳面なやつ(βアミラーゼ)の2つのタイプがいて、それぞれ糖の切り方が違います。αは「切れればよくね?」が口癖のどこからでも大胆にバッサリ切るタイプで、βは「神は細部に宿る」が口癖の隅からキッチリ切ってくタイプです。
性格が正反対のいわゆる凸凹コンビですが、この二人がタッグを組めばかなり強力だと思いません?αがバッサバッサ切っていってそれをβがきっちり細かく切っていくと効率的ですよね。
ただαとβの活動しやすい温度帯が微妙に違います。二人が活動しやすい温度は62度〜65度あたりで、70度くらいだとβが働きづらくなるようです。さすが几帳面なβ、ナイーブですね。
逆にこの性質を応用して酵母が食べられない大きな糖をわざと残して甘いフルボディなビールを作るというワザもあります。温度と時間によってビールの出来が全然違ってくるのでかなり重要な工程といえます。
おかゆから麦汁を濾過
十分に糖ができたら、温度を77度に上げて酵素の働きを止めます。
次にこのおかゆから麦汁を濾します。糖化槽の底から麦汁を抜いて上からそっと注ぐことを繰り返していると、麦芽の殻が天然のフィルターになって段々と麦汁が澄んできます。麦芽を粗目に破砕したことがここで効いてくるわけです。
麦汁が澄んできたら煮沸釜と呼ばれる釜に移します。麦汁が減ってきたら上から75度~80度のお湯のシャワーをかけて、麦芽の殻に残ったエキスをしっかりと濾しとります。
ちなみに麦汁を濾し始めたときに出る麦汁を一番麦汁、その後を二番麦汁と呼びます。一番麦汁の方が二番麦汁よりも糖度は高いみたいですよ。(いつか飲んでみたい)
麦汁を煮沸しながらホップを投入
煮沸釜に移した麦汁を1時間〜1時間半ほど煮沸します。煮沸の目的は殺菌とホップの苦味・香りづけ。ホップの香り成分は煮沸すると飛んでしまうので、3回ほどにわけて投入されます。煮沸初期にいれるのが苦味づけのため、煮沸終了間際でいれるのが香りづけのためです。
ホップにもいろいろな種類があるので、すべて同じホップを投入して統一感を出したり、回毎に異なるホップを投入することで深みを出したりとビールにキャラクターをつけていきます。作り手の想いが反映される工程といってもいいでしょう。
麦汁を冷やして酵母を投入
続いて発酵のフェーズに入ります。発酵させる張本人の酵母が活躍できるのは24度〜4度(酵母の種類によって異なる)。これまでの工程でグッツグツに煮沸していた麦汁を冷やす必要があります。
一方、温度が下がるとバクテリアが繁殖するリスクが高まります。何のために煮沸したんや!と麦汁さんに怒られてしまいます。なるべく外気に触れさせないよう熱交換器やウォートチラーという機械で一気に温度を下げます。
温度が下がったらいよいよ酵母を投入!
発酵
繰り返しになりますが酵母は糖を食べてアルコールと炭酸ガスをプリっと出します。これまでの工程はざっくり言うとこの酵母の糖(おやつ)を作ってきたんですね。すべては酵母のプリっのために!
糖がたくさん入った麦汁に投入された酵母はそれはもう幸せの絶頂ですよ(知らんけど)。ただそのままでは糖分を吸収できないので細胞壁を透過性にします。そんで増えます。それはもう増えます。2〜6時間で倍くらいに。
気が済むまで増えたらいよいよ糖を実食!ケーキバイキングの女子よろしくそれはもう嬉々として食べまくります。その後はお約束のプリっであります。こうしてアルコールと炭酸ガスをたっプリだして至福の境地にいたった酵母は安らかに凝集して底に沈んでいくのでした。酵母さんありがとう!
熟成
発酵が終わったら凝集して沈殿した酵母を取り除き熟成させます。「えっそのまま飲めないの?」と思う人もいると思いますがこの液体は「若ビール」と呼ばれ、まだ飲む段階にありません。大体2週間〜1ヶ月程熟成させるのでしばしお待ちを。
この間まだ「若ビール」の中には酵母が残っているので密かに発酵し続けます(後発酵と呼ぶ)。この熟成の工程を経ることでビールの味が整いまろやかになるとともに、タンパク質や酵母のオリなどが沈んで澄んでいきます。熟成大事。
濾過、熱処理
熟成が完了したらようやく飲めるビールの完成です!そのまま無濾過(クラフトビールは無濾過のものが多い)で飲んでもいいのですが、これ以上発酵が進まないよう酵母の働きを止める場合もあります。
酵母の働きを止めるには、濾過して酵母を取り除く方法と加熱処理する方法の二つがあります。日本の大手ビールメーカーのビールは濾過して加熱処理をしない方法が一般的ですね。
ちなみに「熱処理をしていないビール」を日本では“生ビール”と呼んでいるので、実は缶ビールも生ビールなんですよ(「へぇ」と言ってほしい)。
容器に詰める
いよいよ最終工程。出来上がったビールを容器に詰めていきます。容器は瓶、缶、ケグ(ステンレス樽)、カスク(木樽)などがあります。
海外のビールでは瓶や樽の中にプライミングシュガーと呼ばれる糖や新たな酵母を入れてさらに発酵させるスタイルのビールもあるんですよ。ビールって本当に奥が深くて面白いですよね。
こうして容器に詰められたビールがぼくたちの手元に届けられます。丹精込められて作られたビールをどうぞ心ゆくまで堪能してください!
まとめ
もう一度ビールの作り方をおさらいです。
2.麦芽を粗めに破砕
3.破砕した麦芽にぬるま湯を加えて「おかゆ」を作る
4.おかゆから麦汁を濾過
5.麦汁を煮沸しながらホップを投入
6.麦汁を冷やして酵母を投入
7.発酵
8.熟成
9.濾過、熱処理
10.容器に詰める
ビールってどうやってできるの?という疑問は解消できたでしょうか。普段何気なくビールを飲んでいる方、あまりビールが得意でない方、ビールがどうやってできるかを知ることで少しでもビールに興味をもってもらえたら嬉しいです!
それではまた!Cheers!
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